近年、30代になって初めて公務員を目指すケースが増加しています。理由の1つには、30代後半になると結婚・出産・子育てが本格化し、より経済的に安定した生活を求めるようになることがあげられます。公務員は給与水準が高く、休暇制度などの福利厚生が手厚いのが魅力です。しかし、民間企業から公務員への転職には、慎重な検討が必要な側面もあります。この記事では、30代で公務員転職を成功させるための方法を詳細に解説します。
30代で公務員転職を考える背景
近年、30代になってから公務員を目指すケースが増えている背景には、以下のような理由が存在します。
30代後半になると経済的安定をより求める
結婚、出産、子育てとともに家庭を築くようになると、より安定した収入と生活を希望するようになります。公務員は給与水準が高く、各種手当制度も充実しているため、経済的安定を得られると考えられています。
子育て支援制度を利用できる魅力がある
子育て世代にとっては、公務員の育児休暇制度や育児短時間勤務制度が魅力的に映ります。民間企業に比べて子育て支援制度が手厚いと感じられるため、30代から公務員を志すケースが増えています。
就職氷河期世代の影響で公務員人気が高まる
就職氷河期に民間企業への就職が困難だった世代が30代後半から40代になり、より安定した職を求める動きがあります。公務員は終身雇用と年功序列が保障されており、安定性が高く評価されています。
定年退職後の年金暮らしを安心して送りたい
公務員は退職後に公的年金が支給されます。受給額は民間よりも高く設定されていることから、定年退職後の生活設計を見据えた選択として、公務員が選ばれるケースがあります。
このように、家庭を持ち中高年に差し掛かる時期に、公務員という選択肢に注目が集まっているのが現状です。
公務員転職が成功するための20のポイント
続いて、30代で公務員転職を成功させるための具体的なポイントを20項目に整理します。
公務員試験の社会人経験者枠を活用する
社会人枠は民間での実務経験を重視する試験区分で、30代受験者に適しています。社会人ならではの知識とスキルを訴求できるチャンスです。
専門性を生かせる国家公務員区分を選ぶ
公認会計士やシステムエンジニアなどの専門資格を生かせる国家公務員試験も視野に入れましょう。業務に打ち込みやすくなります。
子育て支援策の手厚い地方公共団体をターゲットにする
先進的な子育て支援策を打ち出している自治体もあります。子育て世代が働きやすそうなところに絞って応募しましょう。
配偶者の協力を取り付けるため、丁寧に話し合う
夫婦で具体的なイメージを共有し、協力を取り付けることが大切です。ゆとりある計画を立てましょう。
預け先を確保するなど子育て環境を整える
試験勉強との両立のために、保育所やベビーシッターなどの預け先を早めに確保しておきましょう。
志望動機が具体的で論理的に記述できるようにする
面接での自己アピールができるよう、動機付けを明確にしましょう。採用庁の分析も忘れずに。
採用データで試験の難易度を検証する
過去の競争率や採用人数データから、試験の難易度を事前に把握しておきましょう。
過去問題で合格ラインと得意分野を見極める
過去問題を解くことで、対策の方向性が見えてきます。効率的な学習計画が立てられます。
先輩公務員の転職体験談を参考にする
実際に公務員転職を成功させた先輩の体験談は、自分の心構えや計画の参考になります。
学習計画表とログで実行力を高める
学習計画表を作成し、進捗を記録することで実行力が向上します。
家族の協力を仰ぎ、学習環境を整える
家族の協力を得て、学習できる環境を用意しましょう。
早めに試験対策を開始し、ゆとりを持つ
試験対策は1年以上かけて始めるのが理想です。余裕を持って準備しましょう。
合格後の生活設計をシミュレーションする
給与や勤務地の変化を考慮し、家族で合格後の生活をあらかじめシミュレーションすると安心です。
仕事と学習の両立に向け時間管理術を磨く
学習時間をどう確保するか、時間管理術を身につけることが成功のカギを握ります。
試験対策における具体的な学習計画表を作成する
自分のペースに合った学習計画表を立て、着実に進めましょう。
学習時間の確保には通勤時間の活用も視野に
通勤時間を有効活用すれば、確実に学習時間を確保できます。
転職活動のスケジュールにゆとりを持たせる
無理のないペースで転職活動を進められるよう、スケジュールに余裕を持たせることが重要です。
家庭とのコミュニケーションを大切にする
学習に理解を得られるよう、家族とのコミュニケーションを大切にしましょう。
試験対策に専門的なアドバイスが得られる支援機関を利用する
試験対策の専門機関を利用すれば、合格の可能性が高まります。
仕事上の留意点を確認し、退職時の人間関係を大切にする
業務に支障がでない範囲で転職活動を進め、退職時の人間関係にも気をつけましょう。
この20項目をチェックリストにして、一つひとつ克服していけば、公務員転職成功の可能性が格段に高まるはずです。
30代で公務員に転職するメリット
次に、30代で公務員へ転職する場合の主なメリットを整理します。
(1) 給与水準が高く、定期的な昇給で更にアップする
公務員の給与水準は民間企業と比較して高い傾向にあります。また定期的な昇給があるため、年齢が高くなるほど給与水準が高騰していきます。
(2) 充実した休暇制度
年次有給休暇に加え、病気休暇や生理休暇、産前産後の休暇も取得しやすい環境が整っています。
(3) 育児休暇が長期間取得可能
1人の子どもに対して育児休暇を取得できる期間が長く設定されているのが魅力です。子育て世代に優しい制度設計がなされています。
(4) 子育てに関する手当が充実
子どもの数に応じて支給される児童手当など、子育てに関する各種手当制度が整備されています。
(5) 勤務時間や休暇が柔軟に設定できる
育児短時間勤務制度のほか、業務内容によってはフレックスタイム制の活用も可能です。制度面でのバックアップ体制が手厚いです。
(6) 職場環境が清潔で快適
執務空間は清潔感があり、設備面での配慮も行き届いています。エアコン完備などの作業環境が整っています。
(7) 人事考課が年功序列型で昇進しやすい
能力主義の人事考課と異なり、年齢とともに着実に昇進していくことができます。
(8) 生涯年収が高く、退職後の年金受給額も高い
給与水準が高いことに加え、公的年金の受給額も高いため、生涯を通じた収入の安定が約束されます。
(9) 職場の雰囲気が家庭的で人間関係が長持ちしやすい
異動のない職場もあるため、長年にわたって同じメンバーと仕事ができるというメリットもあります。
(10)専門性を高められる幅広い業務を経験可能
異動によって多様な業務を経験できるため、公務員としての専門性を高めることができるのが魅力です。
このように、給与面はもちろん、ワークライフバランスの充実といった点でも、公務員の職場には30代にとって魅力的な要素が数多くあるといえます。
30代で公務員に転職するデメリット
次に、30代で公務員に転職する際のデメリットについても知っておく必要がある項目を整理します。
(1) 民間企業への再就職が困難に
一旦公務員となると、民間企業への再就職が難しくなります。業務内容の違いから人材需要とのギャップが生じやすいためです。
(2) 給与が転職前よりも下がる可能性
民間での経験年数に応じた初任給が決まるため、転職前より給与水準が下がることもありえます。
(3) 定期的な異動が発生する
数年おきに異動があり、担当業務の変更を余儀なくされます。環境変化への適応が必要となります。
(4) 個人的な自由が制限される
服務規定が厳格で、勤務時間外の政治活動等の自由が制限されます。個人的な活動にも一定の制約が生じます。
(5) 家庭との両立に時間管理能力が必要
学習と家庭との両立のためには、時間管理能力が求められます。長期戦の精神力が問われます。
(6) 試験の競争率が高く合格する自信が持てない
試験の競争率は高く、努力しても合格できる保証はありません。不安を感じる方も多いでしょう。
(7) 中高年採用がメインの風潮がある
採用において、30代よりも40代以上を積極的に優遇する風潮がある自治体もあると言われています。
(8) 人事考課基準が曖昧で自分の評価が不明確
能力主義的な人事考課が定着しておらず、自分の評価が不透明感を招きます。
(9) 組織の保守性から中途採用への風当たりが強い
新規採用者を優先して登用する組織文化が根強く、中途採用者への風当たりが強い組織もあると言われています。
(10) 転勤により子どもの転校を考慮する必要がある
異動によって子どもの転校問題が生じる可能性があり、教育環境の変化への不安が生じます。以上のように、公務員転職にはメリットばかりでなく、デメリットや課題もあることを知る必要があります。リスク対策を講じることが欠かせません。
公務員試験と競争率の関係性
公務員を目指す上で重要な要素となるのが、採用試験の競争率です。
競争率とは、試験の受験者数を合格者数で割ったものです。競争率が高いほど試験の難易度が高いことを意味しています。
競争率は試験の区分によって異なりますが、例えば国家公務員の総合職(大卒程度)の競争率はここ数年、20倍前後で推移しています。
一方、国家公務員の総合職(高卒者)の競争率は10倍弱、さらに地方上級職は5倍前後となっています。
社会人経験者を対象とした試験区分も設けられていますが、そちらも決して競争率は低くありません。
外形的には総合職(大卒程度)の方が競争率が高く、難関度も上がるといえますが、社会人ならではの知識と経験が求められる試験区分も十分に競争が激しいといえます。
過去に公務員試験を受験したことがない場合は、まず競争率という指標から試験の難易度を確認するのがよいでしょう。
公務員の生涯年収と最終退職金額
続いて、公務員になった後の生涯年収と退職金の目安について確認していきます。
まず生涯年収ですが、役所によって多少の開きはありますが、大卒程度で入った場合の平均的な生涯年収は以下のようになります。
〇〇市職員(大卒区分)の平均的な生涯年収
・20歳入庁:1億円程度
・30歳入庁:8000万円程度
・40歳入庁:6000万円程度
次に、定年退職時の退職金ですが、こちらも役所による差異はありますが、以下のような目安となります。
〇〇市職員(大卒区分)の平均的な退職金額
・定年まで勤務:3000万円程度
・10年勤務後に退職:1500万円程度
・20年勤務後に退職:2000万円程度
このように、公務員は生涯年収、最終退職金共に水準が高いのが特徴です。経済的な充実感を得られるのが魅力といえます。
試験対策の効率的な進め方
公務員試験に合格するためには、勉強時間の確保と効率的な学習進め方が必要不可欠です。ここでは試験対策の進め方について解説します。
(1)早めの着手
試験対策は早めに着手することが大切です。1年以上の期間をかけて準備するのが一般的です。ゆとりあるスケジュール感で学習を進めましょう。
(2)勉強の基本単位時間の設定
1日当たりの学習時間と1回の学習時間を設定します。例えば、1日1時間、1回20分×3回といったイメージです。
(3)学習計画表の作成
試験日を見据えた上で、逆算して学習計画表を作成します。具体的な学習内容と時間、達成目標を明確化します。
(4)学習効果の記録
日々の学習記録をつけることで、自己管理が容易になります。反復の重要性も認識できます。
(5)合格体験記の参考
実際に合格した方の体験談は、自分の学習計画作成時の参考になります。
(6)過去問題の解説活用
過去問題を解き、合格基準点と得意分野、苦手分野を把握します。
以上のポイントを押さえ、計画的に試験対策を進めていきましょう。
学習と家庭生活との両立術
仕事と家庭がある中で公務員試験の対策を進めるには、学習時間の確保が課題となります。ここでは、学習と家庭生活の両立術について解説します。
(1)家族の協力を得る
配偶者をはじめとする家族の理解と協力が不可欠です。丁寧に相談しましょう。
(2)子どもの世話を頼める人を確保する
子どもを預けられる保育所やベビーシッターを確保しておきましょう。
(3)通勤時間、昼休憩時間の活用
電車やバスの移動時間を使って学習を進めましょう。
(4)早朝、夜間の時間を有効活用
睡眠時間を調整して学習時間をつくり出します。
(5)家事と学習のタスク分担
配偶者と家事を分担することで学習時間をつくります。
(6)気分転換のための休憩を取る
休憩を取り、リフレッシュする時間も大切です。
このように、家族の協力を得つつ、時間の余裕を工夫することで、学習時間と家庭生活の両立を可能にします。
転職活動の具体的なスケジュール管理
公務員転職に向けた活動は、試験対策と並行して進める必要があります。ここでは、転職活動のスケジュール管理のポイントを解説します。
(1)募集スケジュールの把握
まずは受験を希望する役所の募集スケジュールを確認します。
(2)受験資格の確認
自分が受験資格を満たしているかを確認します。
(3)エントリー期間の調整
複数の試験を受ける場合は、エントリー期間が重ならないよう調整します。
(4)申込手続きの事前確認
webエントリーなのか、郵送なのかを確認しておきます。
(5)添付書類の準備
履歴書や職務経歴書などの添付書類を事前に作成しておきます。
(6)推薦人確保のタイミング
必要があれば推薦人手配を早めに済ませておきます。
このようにスケジュール感を持って転職活動を進めていけば、漏れなく手続きを進めることができます。
転職後のライフプランとキャリアプラン
公務員への転職が決まった後は、転職後の新たな人生設計が必要となります。ここではキャリアプランとライフプランについて確認します。
(1) ライフプランシミュレーション
公務員の給与体系を確認し、家計のシミュレーションを行います。
(2) 資産運用と年金の計画検討
退職金、年金を考慮に入れた資産運用を検討します。
(3) 異動と子どもの学校選択
異動に対応した子どもの就学先選択を検討します。
(4) 住環境の選択
職員住宅の活用も視野に入れた住環境を選択します。
(5) 職場の人間関係づくり
職場の人間関係づくりに注力し、居心地の良い職場にします。
(6) 中長期のキャリアプラン
10年、20年先のキャリアプランを描き、実現に向けた道筋を考えます。
このように、仕事と生活の両方の視点から、転職後の計画を立てることが大切です。
以上、1から10までの項目にわたり、30代での公務員転職成功のための方法を解説しました。
まとめ
(1) 家族の協力を得ること
公務員試験の対策と家庭生活の両立には、家族の理解と協力が不可欠です。丁寧に話し合い、協力関係を築くことが大切です。
(2) 計画的な準備を心がけること
1年以上の期間をかけ、早めに計画的に試験対策を始めることが成功の秘訣です。焦りを感じることなく、着実に準備を進めましょう。
(3) ストレス軽減法を心得ておくこと
長期の試験対策ではストレスも蓄積しがちです。適度な息抜きとリフレッシュの方法を心得ておきましょう。
この3点を念頭に置くことで、30代の公務員転職への挑戦はよりスムーズになるはずです。合格を目指す漫長な戦いになりますが、明確な目的と計画を持ちつつ、諦めずにチャレンジしていくことが大切です。
その先には、生涯設計がしやすく、家族との時間を大切にできる、充実した公務員人生が待っています。困難はあっても、前を向いて進み続けることで必ず道は開けます。
30代で公務員を目指す皆さん、風穴はあなたの努力次第で必ず開くはずです。本記事が、その過程での一助となれば幸いです。応援しています!
コメント