【社労士監修】社会保険料の概要や計算方法について社会保険労務士がわかりやすく解説

給与明細と電卓の写真。社会保険料を算出しているイメージ

この記事では、なかなか複雑でわかりにくい社会保険について、社会保険のプロである、社会保険労務士の方に、詳しく解説していただきます。

だいくん

この記事により社会保険についての概要や種類、社会保険料の種類ごとによる社会保険料の計算方法の違いや注意点がわかります。

この記事を書いた人

大学を卒業後、信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。
その傍ら、WEBライターとして約6年、資格を生かした年金・社会保険・労務関係・その他の法律などの記事を主に執筆してきました。「分かりやすく理解していただく」をモットーに執筆。
【保有資格】社会保険労務士、行政書士、日商簿記3級等。

病気、ケガ、高齢、失業、労働災害、介護などなどのリスクに備えて、生活を保障する公的制度のことを社会保険制度といいます。社会保険制度はその種類ごとに保険料が発生し、それぞれ算出方法が異なります。

また、社会保険料の種類ごとに事業主(会社側)が全額負担するものもあれば、従業員ごとに異なる保険料を支払うものもあるため注意が必要です。それでは、社会保険料の概要や計算方法についてわかりやすく解説していきます。

目次

社会保険とは?

社会保険とは、病気、ケガ、失業、労働災害などに対して必要な給付を行うなど、日本国民年金の生活を保障する公的保険のことです。

社会保険には、その目的によって健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類に区別されます。

健康保険

病気、けが、休業、出産、死亡などに対して給付などを行う公的医療保険制度のことです。

厚生年金保険

公的年金の一つで厚生年金保険の被保険者の老後、障害、死亡などに対して、年金や一時金などの給付を行います。

介護保険

要介護状態または要支援状態になった65歳以上の方が介護サービスを利用した場合に費用の一部が保障される制度です。

雇用保険

労働者の失業、再就職、教育訓練などに対して必要な給付を行い、労働者の生活及び雇用の安定を図り、再就職の援助を行うなどを目的とした制度のことです。

労災保険

業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡に対して必要な保険給付を行う制度になります。

広義の社会保険

社会保険の定義は、考え方によって広義の社会保険と狭義の社会保険の2種類に分かれます。

広義の社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類のことです。

狭義の社会保険

狭義の社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険の3種類のことです。

一般的に社会保険といえば、狭義の社会保険のことを指すことが多く、雇用保険、労災保険は労働保険と呼ばれて狭義の社会保険と区別されます。

社会保険料の計算の基になる標準報酬月額、標準賞与額とは?

健康保険、厚生年金保険、介護保険の狭義の社会保険と、雇用保険、労災保険の労働保険では保険料の計算方法が異なります。

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料につきましては、標準報酬月額を基に保険料が決定されるのです。

社会保険料の算出に必要な標準報酬月額、標準賞与額について、見ていきます。

標準報酬月額

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の被保険者の毎月の税引き前給与額などの報酬月額を、一定の幅に区分された等級に振り分けて決定される金額のことです。

健康保険(介護保険を含む)の標準報酬月額は、1等級(5万8千円)から50等級(139万円)までに分類されています。

また、厚生年金保険の標準報酬月額は、現状1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までに分類されています。

このように標準報酬月額には、上限、下限が設定されていて、実際の報酬額が標準報酬月額を上回っても標準報酬月額は健康保険が139万円、厚生年金保険は65万円です。

また、実際の報酬額が標準報酬月額を下回った場合でも、標準報酬月額は健康保険が5万8千円、厚生年金保険は8万8千円です。

標準賞与額

賞与時の健康保険料と厚生年金保険料は、標準賞与額により算出されます。

標準賞与額の算出方法は、健康保険や厚生年金保険の被保険者の税引き前賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。

標準報酬月額に含まれる報酬、含まれない報酬

報酬月額を算出するのに、毎月の給与額=報酬月額になるわけではありません。

基本的に毎月の給与は、基本給とその他手当によって構成されています。

その他手当の中には、報酬月額に含まれる報酬、含まれない報酬があるのです。

どのような報酬が報酬月額に含まれ、どのような報酬が報酬月額に含まれないのかを見ていきます。

標準報酬月額に含まれる報酬

報酬月額に含まれる報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののことです。

ただし、臨時に受けるものや3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りではありません。

具体的には、以下の報酬は標準報酬月額に含まれる代表的な報酬です。

・基本給

・役付手当

・勤務地手当

・家族手当

・通勤手当

・住宅手当

・残業手当

・年4回以上支給される賞与

標準報酬月額に含まれない報酬

一方、標準報酬月額に含まれない代表的な報酬は、以下になります。

・実費弁償的な出張旅費、赴任旅費など

・労務の対象とされていない年金、共済組合からの給付金、預金利子など

・退職手当

・期末手当

・勤勉手当

・年3回以下支給される賞与

標準報酬月額の決定方法

健康保険料(介護保険料)や厚生年金保険料を算出するのには、労働者一人一人の標準報酬月額を決定しなければなりません。

この労働者一人一人の標準報酬月額を決定するには、大きく分けて以下の3つの決定方法があります。

状況によって標準報酬月額の決定タイミングが、変わってくるのです。

定時決定

毎年7月1日現在に使用されているすべての被保険者について、標準報酬月額を1年ごとに見直す基本的な標準報酬月額の決定方法です。

定時決定による標準報酬月額の決定方法は、以下になります。

まずは、4月、5月、6月(いずれも支払基礎日数17日以上)に被保険者が受け取った総額報酬を、その期間の総月数で除することにより報酬月額を算出します。

算出された報酬月額から決定された標準報酬月額は、基本的にその年の9月から翌年8月までの1年間使用することになるのです。

また、4月、5月、6月に支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、その月を除いた残りの月の総額報酬を、残りの月数で除することにより報酬月額を算出します。

4月、5月、6月の3か月ともに支払基礎日数が17日未満である場合は、従前の報酬月額により決定します。

資格取得時決定

就職や転職などによって新たに被保険者の資格を取得した場合、新たな会社のその時の報酬に基づき報酬月額を決定する方法です。

被保険者資格を1月1日から5月31日までの間に取得した場合は、資格取得月からその年の8月まで資格取得時決定により算出された標準報酬月額を使用します。

この場合、9月からは定時決定により決定した標準報酬月額を使用することになります。

また、被保険者資格を6月1日から12月31日までに取得した場合は、資格取得月から翌年8月まで資格取得時決定により算出された標準報酬月額を使用することになるのです。

この場合、翌年の9月からは、定時決定により決定した標準報酬月額を使用することになります。

随時改定

昇給や降給などによる固定的賃金が、従前の報酬月額よりも著しく高低を生じた場合であって、厚生労働大臣が必要と認めた場合に標準報酬月額を改定する方法です。

具体的には、変動月から継続した3か月間に受け取った報酬総額を3で除して得た額に対応する標準報酬月額が、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合に改定します。

標準報酬月額の改定時期は、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目です。

社会保険料の計算方法

健康保険料(介護保険料)や厚生年金保険料の社会保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に保険料率を掛けて算出されます。

算出された社会保険料は、事業主と被保険者で折半して支払います。

健康保険料の計算方法

健康保険の被保険者は、毎月の給与と賞与時の天引きにより健康保険料を支払わなければなりません。

健康保険料の計算方法は、以下の計算式により算出されます。

・毎月の給与に対する健康保険料

事業主と被保険者の折半後の健康保険料額 = 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2

・賞与に対する健康保険料

事業主と被保険者の折半後の健康保険料額 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2

健康保険料率は、被保険者の健康保険組合ごとに異なります。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険の被保険者は、毎月の給与と賞与時の天引きにより厚生年金保険料を支払わなければなりません。

厚生年金保険料の計算方法は、以下の計算式により算出されます。

・毎月の給与に対する厚生年金保険料

事業主と被保険者の折半後の厚生年金保険料額 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率(18.3%) ÷ 2

・賞与に対する厚生年金保険料

事業主と被保険者の折半後の厚生年金保険料額 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率(18.3%) ÷ 2

介護保険料の計算方法

介護保険の被保険者の中で、40歳以上65歳未満の健保組合などの医療保険加入者を第2号被保険者といいます。

介護保険料は、満40歳になる日(40歳の誕生日の前日)が属する月から支払わなければなりません。

介護保険の第2号被保険者で健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。

・毎月の給与に対する介護保険料

介護保険料の計算方法は、以下の計算式により算出されます。

事業主と被保険者の折半後の介護保険料額 = 標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2

・賞与に対する介護保険料

事業主と被保険者の折半後の介護保険料額 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2

介護保険料率は、被保険者の健康保険組合ごとに異なります。

社会保険料を計算する際に注意すべきこと

社会保険料は必ず1か月分の保険料が給与から天引きされるため、日割りで計算をすることはありません。

また、長期の欠勤などにより給与の支払いが発生しない場合であっても、社会保険料は支払わなければなりませんので注意が必要です。

まとめ

社会保険は、考え方によって広義の社会保険と狭義の社会保険の2種類に分かれます。

一般的には、狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)のことを社会保険として指すことが多いです。

社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)は、事業主と被保険者が折半で支払います。

被保険者分の社会保険料は、毎月の給与と賞与時に天引きされます。

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